イタリア人がエスプレッソに砂糖を入れるのに理由なんかない

Espresso at the Gelateria delle Alpi, Turin, Italy

こんな記事を読んだ。

イタリア人がエスプレッソに砂糖を入れるのには理由がある

記事のタイトルを見ただけで違和感を覚えたのでちょっと嫌な予感がしたが、読んでみたら的中した。イタリア人がエスプレッソに砂糖を入れる理由を問う、そのスタート時点からして違和感を覚える。エスプレッソって、砂糖を入れるのがデフォルトだよ?それは、ある程度イタリアの文化に精通している人であれば分かってくれるのではないだろうか。いや、分からなくても、いいけどさ。

この記事突っ込み所満載なんだけど、いちいち論う(あげつらう)とさらに不愉快になるのでやめておく。ただ、ひとつだけ言いたい。私はかつてのようにイタリア贔屓ではないけれども、それでもこの記事のように思い込みと勘違いで語られているのを読むと腹が立つ。イタリアでも他の国でもどこでも、その地域の文化をまともに知ろうともせず、思い込みや偏見が混ざった考えをあたかも普遍的な真実であるかのように語っているのを聞くと、不愉快なんだ。

私は、「イタリア人がエスプレッソに砂糖を入れるのに理由なんかない」という考えだ。その根拠はと問われれば、かつて車系ライターであった松本葉氏の以下のエッセイを読めば一目瞭然。これ以上言うことなんかないのである。

”ランボルギーニの取材の帰り、ボローニャの駅のバールで眠気ざましにエスプレッソを注文したのだが、お砂糖を入れてかき回してさて飲もうとカップを持ち上げると、隣にいたおじいさんが「ちょっと待った」とこういった。
私が手にしていたのはおじいさんのカップだったというようなことも、持ち上げたのは砂糖壺だったということもなかったから、何事かと不思議に思いつつ、とりあえずカップを置くとおじいさんがいきなり、そこにお砂糖を山盛り2杯入れ、グルグルグルグルッと丹念にかき回したのだ。
「こうやるもんだ」
おじいさんはこんなふうに言うと飲むようにあごと手で指示したのだが、いきなり他人のコーヒーにお砂糖を入れる、その行為に仰天し、あまりに仰天したのでつい指示に従ってしまったのだが、従ってみてもう一度仰天した。めちゃくちゃ美味しかったのだ。
「美味しい」、思わず漏らすと、おじいさんはだろうみたいな顔でこう言った。
「エスプレッソは甘くして飲むもんだ」”

どこにいたってフツウの生活 松本葉(二玄社)より。