木村伊兵衛 パリ残像展〜日本橋三越リニューアル(第1期)

“花のパリはやはり「花の巴里」で、じつによいところのようだ。
(略)
何より人間が大人で気持ちがいい。言葉が通じなくてもからだで何かが感じられる。”

– 木村伊兵衛 撮影日記(1954年10月20日)より。

 

10月27日 土曜。まずはマンダリンオリエンタル グルメショップのカフェにて、パンとカフェラテで腹ごしらえをする。その後向かったのは…

リニューアル第1期完了後の、日本橋三越。改めて見るとこの天女像はすごいね。

フラワーアーティスト ダニエル・オスト氏によるインスタレーション。天女像の色に合わせたオランダ産の蘭の花が飾られていた。

吸い込まれそうな蘭の表情。オスト氏は1985年の日本訪問時、花人 栗崎昇の言葉「西洋人は花の姿形で色で飾ろうとするが、日本人は花の魂を生けるのだ」に衝撃を受けたそうだ。

それにしてもリニューアル後の日本橋三越はなんだかますます重厚にきらびやかになった印象なんだけど、そんなに敷居を高くしたらますます若い子が寄り付かなくなるじゃないの、と余計な心配をしてしまう。その辺、どう考えているんですかね。第2、第3期のリニューアルはどう打って出るのか。

追記
以下の記事によれば、三越の方向性は「富裕層の深堀り」らしい。あたしゃとうていお呼びじゃありませんな…
三越 vs 高島屋「お江戸日本橋の百貨店戦争」老舗は別々の道を歩み始めた

 

写真展 木村伊兵衛 パリ残像

さて今日のお目当ては、新館7Fで開催の写真展 「木村伊兵衛 パリ残像」。前売りチケット購入して、楽しみにしてたんだ。

木村伊兵衛は、アンリ・カルティエ・ブレッソンやロベール・ドアノーとも親交があった昭和期のフォトグラファー。今回の写真展は、伊兵衛がパリで撮影した写真を130点ほど展示したもの。日本にとってフランスが果てしなく遠い異国だった頃、1954年と55年に撮影されたものだ。

そしてその内容ときたらもう、素晴らしいの一言に尽きる。

1950年代のパリの風景が、めちゃくちゃリアルなのだ。上流階級の婦人、下町の子供たち、モンパルナスのネオンと夜の女、歩道に散らかるゴミ、どれもそのまんまリアル。眩しくて圧倒される。こんな写真、今の時代には絶対撮れない。構図が中途半端なのも結構あるんだけど、それがかえってリアリズムを伴って見る者にグイグイ迫ってくるんだ。

人々の服装が、これまたお洒落である。すごいと思ったのが、お洒落をしている人を写していてそれがお洒落なのは当然なんだけど、メインの被写体ではなく、遠くの方にたまたま小さく写り込んだ通行人の格好がめちゃくちゃお洒落なことだ。庶民的な女の子が手にしているカゴバッグがすごく可愛かったりとか。

ジャック・タチの映画を思わせるショットもいくつかあった。街の壁に貼られた当時のポスターがやはりヴィンテージ感満載で時代を表している。そこはやはりフランス。レトロでポップなオランジーナやジタンのポスターに目を凝らすのも楽しい。細部のディテールにも注意を向けると、すごくいろんな発見があるんですよ。

お気に入りの写真がいくつかあった。河畔の草むらで寝そべる若者(この写真は確かにブレッソンの影響を感じる)。カフェでおしゃべりを楽しむマダム。ロンシャン競馬場でとびきりのお洒落をしたカップル。好きな写真の前では、ずっと見ていたいと思った。会場に、2時間いた。

 

今の時代、誰でもそれっぽくかっこいい写真が撮れる。でも、伊兵衛みたいな写真は誰にも撮れっこない。

それらはインスタもセルフィーも存在しなかった時代だからこそ撮れた、宝物のような写真の記録なのだ。