さらりと憎い演出が満載! パリ、嘘つきな恋(Tout le Monde Debout)

Tout le Monde Debout

「パリ、嘘つきな恋」(原題:Tout le Monde Debout) 鑑賞。( 5月26日 東銀座東劇にて)

いやー、これはよかった。観る前からこれは絶対いい映画だ、好きになると思っていたけど、それ以上に素晴らしかった。この映画はパリを舞台にした軽妙洒脱なラブストーリーとして、普通に楽しめる。だけどラブストーリー/ラブコメディーの体は、触媒に過ぎないのではないかと思う。

この映画の原題は”Tout le Monde Debout”。直訳すると「みんな、立って」。コンサートなんかでミュージシャンが着席している観客に呼びかけるときなんかに使われる。かなり、フランス人らしい皮肉っぽさ、ひねりがきいてる。このようなタイトルをつけた監督の意図は、様々な場面で感じることができる。(ちなみに監督兼主演のフランク・デュボワは、彼の母親が車椅子で生活するようになったことがきっかけで、この映画を製作するに至ったとのことだ)

例えば作品中にはいくつか、「そうきたか!」と思わせる心憎い演出がちりばめられている。それらは、観客へのいい意味での「裏切り」とも言える。多かれ少なかれ、身体的、性的なマイノリティに対してステレオタイプなイメージを抱いている観客は一瞬「ハッ」とさせられるだろう。そしてその後「そういうことね」と、ニヤリと苦笑するだろう。

でも難しく構える必要は何もない。ここには押し付けがましく説教くさいメッセージなんて存在しない。さらりとウィットに富んだユーモアを、素直に楽しみつつ観ればいい。そうすれば、素晴らしいものが待っている。

あの素晴らしいラストシーン。多くの観客の予想を裏切るであろう、あのシーンが、この映画のすべてを表している。あのシーンのために、それまでがあったのだ。あれは、最高の裏切りです。